そのため、海外の消費傾向の変化についた本を、時間を見つけてちょこちょこ読んでいます。
その中で、東京で起きていることとリンクしていると感じたのが「グレート・リセット」です。
著者のリチャード・フロリダは「クリエイティブ・クラスの世紀」を書いた人で、社会学的に新しい生き方をしている層を見つけて、その深層にあるものを浮き彫りにするのが得意な人です。「グレートリセット」という題名でもあり、内容は歴史的に大不況の後にはつねに社会経済的なリセットが起き、新たな構造やトレンドが産まれ、それによって社会経済的な繁栄がもたらされるということを書いた本になっています。
この本の中で、取り上げられている次代を担う新しい消費トレンドの層を「ニュー・ノーマル族」と名付けています。クルマを欲しがらず、郊外の大邸宅を欲しがらず、都市に住んで徒歩・自転車・電車で通う人たち・・・。概念としては、ニューノーマルの一部がクリエイティブクラスと捉えたほうがいいようです。
この「ニュー・ノーマル」ですが、今の東京に住んでいる私たちからしたら、すでに驚きではなく、身近な風景になっていると思います。以下、いくつか記述を紹介しますね。
実際の品物、とくに贅沢品に対する需要は減っているが、消費意欲がなくなったわけではない。対象物が変化しただけだ。経験に対する出費、たとえば旅行、ウェルネスやフィットネス、娯楽、自己表現、自己啓発などは、人気が衰えない。
クリエイティブ・クラスの人々は、こぢんまりした住宅に住み替えてエコカーに切り替えても、漫然とすわっているだけでは満足できない。彼らは相変わらずレストランを捜し、文化イベントを追い求めるだろう。家族をカヤック漕ぎやスカイダイビング、「ボランティア・バケーション」に連れていったり、ビール醸造や家庭菜園、家具づくりなどに取り組んだりする。
新製品や新しいサービスの新市場を活気づける一方、自給自足やDIYの精神を実践しようとする。
人生で成功した裕福な人は、有名ブランドを着てロゴを見せびらかすのではなく、消費しないこと、あるいは賢い消費をする能力を誇示する。環境に優しく、政治的に正しい消費の仕方だ。これは、名誉の勲章だといえる。
この本でも、記述されていますが全員がこういった考えをもっているわけでなく、「大きなクルマ、大きな住宅にあこがれる層もまだ多い」のです。しかし、新しいトレンドとして、上記で紹介したような「小さいことはいいことかもしれない」という消費環境が産まれてきています。そして、その分のお金で生産的な消費を楽しむ人たちです。
90年代、川勝正幸さんが世界中のポップカルチャーでシンクロニシティが起きている状況を「世界同時渋谷化」と表現しましたが、この「ニュー・ノーマル族」や「クリエイティブ・クラス」に起きていることは世界中同じのようです。いや、もしかしたら不況が深刻だったからこそ、日本が先頭走っているかもしれません。
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