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2012/06/08
「考えさせない」サービスと「考えなくちゃいけないことと向き合わせる」サービスの違い
意志決定のコストを取り除いてあげる、この時間だけは他のことを考えずに現実逃避できる。今、そんなサービスがウケています。ソーシャルゲームだったり、バラエティ番組だったり、その風潮をどうこう言われてしまう類のものです。でも、これが多くの人に、受け入れられているものなのです。
前回、「世界の終わりのものがたり〜もはや逃げられない73の問い」という企画展に関するエントリーを書いて気が付いたのですが、以前にも増してわたしたちは「考えなくちゃいけないこと」に囲まれています。
この企画展で提示されている「あなたの人生でいちばん心配なことはなんですか?」という根本的に向き合って自問自答しなくちゃいけないこと。日々の仕事の中で考えなければいけない現実的な課題。日々の生活の中で、考えなければいけない諸々のタスク。わたしたちは、多くの「考えなくちゃいけないこと」に囲まれて生活しているのです。
そんな環境下だからこそ、大きく二つの方向で吸引力のあるサービスが生まれています。
一つが、ユーザーに「考えさせない」サービス。もう一つが、ユーザーに「本来考えなくちゃいけないことと向き合わせる」サービスです。どちらも同じ環境で、何を提供するかの違いですが、どちらも面白い傾向だと思います。そして、前者のサービスはマスに受けるが、後者のサービスは考えることに慣れている一部の層にしか受けいれられないという特性を持っています。「良薬口に苦し」ですからw
■ユーザーに考えさせないサービス(現実逃避)
・バラエティ番組
仕事から帰ってきて深夜に見るテレビで考えさせれたくない・・・
・ソーシャルゲーム
習慣でできて、空き時間に小さな達成感があるもの。でもいつの間にかやめられない、とまらない・・・
・友達同士でのコミュニケーションツール(LINEなど)
空いた時間に簡単にコミュニケーションが取れて、慰め合うことができるもの
・自分のことを考えなくて良い他人リアルドラマ
ビッグダディや芸能人スキャンダル、アメリカンアイドルやRPG型アイドルなど。スポーツもここに入るはず
この手のサービスの作り手は、いかに摩擦が少なく自然に楽に使ってもらえるか、見てもらえるかにコストをかけています。気軽にはじめてもらえて、その時間に心や頭に負荷をかけずに、また次も体験してもらえるように腐心しています。
■ユーザーに「考えなくちゃいけないことと向き合わせる」サービス
・良質なドキュメンタリー映画や書籍(映画happyなど)
・課題を提示する企画展・アート(現代アートはまさにココ)
・テーマを決めて議論・講演会/自主的な学びの場(アカデミーヒルズ、自由大学など)
・ミッションを持ったニュースメディア(greenzやtechwaveなど)
一方で、こちらのサービスでは、見てもらうためにはユーザー側に負荷を求めます。ハードルを高くしているから、クオリティを保てるという面もあります。そして体験している間に、心と頭に多くの摩擦を起こさせることに腐心しています。何度も同じものを体験しに来てもらうことよりも、自分の現実でアクションを起こさせるのかということを狙いにしています。
だから、後者の「考えなくちゃいけないことと向き合わせる」サービスには、コミュニティ型のサポート機能が付随してきています。
こうやって整理してみると、なぜ以前は人気のあった「ドラマ」というフォーマットに吸引力がないかも気づけてきます。現実社会の問題とシンクロすると一部の人(後者ターゲット)しか反応されず、一方でドラマよりも面白い他人リアルドラマがガチで展開されていて、ここに勝つのは至難の業です。
ときどき、冷静になって俯瞰的に起きていることを分析してみると、誰に?何を?どうやって?提供しなくちゃいけないかが見えてきます。その根底になっている人間の感情って、やっぱり面白いなぁとつくづく感じるわけです。
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