普通、雑誌の中吊りは、特集記事を興味をひくようにたくさんのとっかりを見せることで購入を訴求してきました。この目次型中吊りは一定の効果があり、他の中吊りに比較してもニュースがあり、読んでいる人にとっても新しい情報が得られる「疑似立ち読み」効果があるので、閲読率が高くなります。見出しの一つでも引っかかれば購入につながる可能性があり、電車から降りた駅売店などが流通チャネルなので速攻性があります。
しかし、このニュートンの中吊りは、訴求ポイントをほぼ一つに絞っている。そうです。「虚数がよくわかる」です。電車で良くある「自己破産」や「消費者金融」の広告と違って、普段から悩んでいたり興味を持っている人が少ない分野です。さらに、雑誌は「ニュートン」。僕もそうですが、ほとんどの人は、科学系の雑誌を購入しようとは普段考えないと思います。そこに「虚数がよくわかる」で一点突破です。
ある疑問に答えを出すために編み出された魔法の数、それが「虚数i」。
2乗して-1になる“想像上の数”だが、現代の科学技術には不可欠な存在だ。
その誕生物語から、「どう役に立つのか?」まで、なるほどよくわかる特集!
このボディコピーを読んで、ものすごく知的好奇心をくすぐられました。科学や数学に興味がない人でも、誕生物語やなぜ役立つのかとかなら知りたいですよね。
いままで取り込めていない新規ユーザーを狙いに行くときに、雑誌の特集自体を新規ユーザー向けに組むことはよくあることです。ただし、既視感のある媒体、手垢がついた媒体になればなるほど、狙おうと思っているユーザーは表紙なども読んでくれませんし、手にとってもくれません。だから、プロモーションが重要になってくるのですが、そこが首尾一貫していると、この中吊りの事例のようにスイッチが入ります。