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2013/05/23

人生を“何か”に捧げた老人が今一番ヒップ!


ビル・カニンガム&ニューヨーク』。まさか、この地味なドキュメンタリー映画が、こんなに話題になるなんて!!

ニューヨーク・タイムズ紙の人気ファッション・コラム「ON THE STREET」と社交コラム「EVENING HOURS」を長年担当するニューヨークの名物フォトグラファー、ビル・カニンガム。ニューヨークの街角で50年以上にもわたりファッショントレンドを撮影してきたニューヨークを代表するファッション・フォトグラファーであり、ストリートファッション・スナップの元祖的存在だ。

雨の日も風の日もニューヨークのストリートに自転車で繰り出してはファッションスナップを撮り続け、夜になればチャリティーパーティーや社交界のイベントに出かけて行き、ときにはパリのファッション・ウィークにも遠征し撮影する。その鋭いセンスと独自の着眼点が、世界中のファッション・ピープルから注目され、84歳の現在でも現役ファッション・フォトグラファーとして多大な影響を与え続けている存在だ。

しかしビル自身はいつもお決まりのブルーの作業着姿で、雨の日にかぶる安物のポンチョはやがて破れてしまうからと、新調することもなくテープで修繕して着続けている。コーヒーは安ければ安いほど美味しいと言い、ニューヨーク・タイムズ紙の写真家としての客観的な立場を保つために、パーティー会場では水一杯すら口にしない。50年以上暮らしていたカーネギーホールの上のスタジオアパートの小さな部屋は、今まで撮影した全ネガフィルムが入ったキャビネットで埋め尽くされていて、簡易ベッドが置いてあるのみ。キッチンもクローゼットさえもない。仕事以外のことには全く無頓着で、頭の中はいつもファッションのことだけでいっぱいといったような質素な生活ぶりなのである。 
ストリートファッションを記録し、伝えることに生涯を捧げている老人の生活と仕事観を知るための映画です。「私は働いていません、好きなことをしているだけです」と言い切る彼の生活は、本当に潔いものです。

彼がどれだけ普通のことを犠牲にしているかは、「誠実に働くだけ。それがニューヨークではほぼ不可能だ。正直でいることは風車に挑む、ドンキホーテだ」という言葉の重みで伝わってきます。

一見古くさく見えるリタイアせずに一生現役で働くことの喜びと、自分の人生をやるべきことに捧げている姿は、これからの生き方として、一番輝いて見えました。

奇しくも、本日、80歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんの人生からも、同じようなメッセージを感じます。ドキュメンタリー映画として話題となった「ハーブ&ドロシー」も、現代アートのコレクションに人生を捧げた質素な夫婦の姿が、すごく魅力的に見えました。

もはやアーリーリタイアメントに魅力を感じられなくなった価値観を持っている人間にとって、“何か”に人生を捧げた老人の生き様こそが、一番のお手本となっています。

カッコイイ生き様をしている老人(あえて敬意を込めて老人と呼びます)に、もっと会って話をしてみよう。そう、思ったドキュメンタリー映画でした。

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