番付を紹介した後、その背景にある消費者心理を「空気読み」しておきます。
今回は「5つのキーワード」としてまとめてみました。
【東】
横綱:該当なし
大関:スマートフォーン
米アップル「iPhone」の独断場に参入したNTTドコモ向け「エクスペリア」が好評。普及に弾みがつく
関脇:iPad(アップル)
タッチパネル式多機能端末。5月下旬の発売直後から品薄に。電子書籍普及につながるか
小結:東京スカイツリー
東京・墨田区の自立式電波塔。完成すれば634メートルで世界一。建設風景見たさに観光客殺到
前頭:コロプラ(コロニーな生活☆PLUS)
携帯電話の全地球測位システム機能を使う位置ゲーム。利用者は116万人を超えて観光にも寄与
同:220ボルト家電
春節で訪日した中国人観光客が電圧220ボルトの日本メーカー製家電に殺到。大手量販店もコーナー設置
同:デパクロ
デパート+ユニクロ。フォーエバー21なども含め低価格衣料品店が百貨店に相次ぎ進出し集客
同:1Q84 BOOK3(新潮社)
200万部以上売れた村上春樹さんのベストセラーの続編。発売から12日で100万部を突破
同:250円牛丼
ゼンショー「すき家」と松屋フーズが導入した牛丼の最安値。月間客数が前年比1割以上伸びた
同:坂本冬美
ビリーバンバン「また君に恋してる」を酒類CMでカバー。シングルCD32万枚、音楽配信150万件
同:薄型テレビ
家電エコポイント制度の対象機種見直しで特需発生。3月の販売台数は前年同月比2.5倍の伸び
同:手荒れ予防洗剤
手肌の荒れにくさと洗浄力の両立をうたう台所用潜在。花王やP&Gが相次ぎ投入
同:山スカート
登山を楽しむ20〜30代の「山ガール」御用達。おしゃれなアウトドア派女性の増加を象徴
同:カット野菜
天候不振で野菜が高騰した4月に人気上昇。冷凍野菜や野菜ジュースにも特需が及んだ
同:ハイパーヨーヨー(バンダイ)
懐かしの玩具が復活。イベントで認知度上げ、国内累計500万個の販売目標が達成可能なペース
同:鎌倉シャツ(メーカーズシャツ鎌倉)
5245円均一価格のまま品質を高め、口コミで人気に。ここ3カ月平均売上高は前年比50%増
同:低価格均一居酒屋
ドリンクや料理を300円均一価格で提供する居酒屋。「安くてうまい」で人気広がり参入相次ぐ
同:お試しかっ!(テレビ朝日)
飲食店のメニューを食べまくるコーナーが人気の番組。集客にも貢献し、晴れてゴールデン帯に
【西】
横綱:3D
国内で984万人を動員した「アバター」など映画がヒット。対応テレビが続々登場し、3D放送・配信元年の予感
大関:竜馬
大河ドラマのヒットで高知県の経済効果は400億円超との資産。酒類や玩具にあやかり商品が続出
関脇:LED電球
電球全体の販売額に占める割合が4月、初めて過半に。低価格化も進み家庭に浸透
小結:ラー油
桃や「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の人気衰えず競合商品も。「食べるラー油」が定着
前頭:もしドラ(ダイヤモンド社)
女子高生と大物学者という取り合わせの妙がうけた青春小説の通称。昨年末発売で51万部突破
同:ビックアメリカシリーズ(日本マクドナルド)
ボリューム2.5倍のハンバーガー4種。第一弾の「テキサス」は発売4日間で予想の2.2倍を売る
同:オルニチン
肝機能を高めるとされるシジミ由来のアミノ酸。みそ汁やビール風味飲料に添加した商品が人気
同:ストライド(キャドバリー・ジャパン)
味が長持ちするガム。二つ折りのパッケージもうけて、売上は当初計画の2倍超のペース
同:150円ロールケーキ
コンビニ各社が相次ぎ発売。味の種類も増え、少なくとも国民の3人に1人が食べた計算に
同:ミルミル(ヤクルト本社)
5年ぶり発売の乳酸菌入りヨーグルト飲料。当初目標の2倍の売れ行き。復刻商品の代表格
同:エコ内窓
政府の住宅版エコポイント制度の代表的な対象品。前年比で4倍も売れたメーカーも
同:ポケットドルツ(パナソニック)
女性が携帯しやすいように小型化した電動歯ブラシ。3〜5月で年間計画の30万台を突破
同:クラフト
毛糸などでアクセサリーやマスコットを作る手芸が人気。お金がかからない趣味は不況にも強い
同:AKB48
秋葉原の専用劇場へ「会いに行けるアイドル」がヒット連発。最新作も出荷ベースで65万枚と好調
同:CR-Z(ホンダ)
スポーツタイプのハイブリット車。2月発売から4カ月で年間販売目標の1.3倍の1万6000台受注
同:カラーゴルフボール
昨年夏にプロゴルファーが使い始め需要拡大。市場全体に占める割合は28%とほぼ倍増
同:10分フィットネス
10分単位で利用可能なフィットネスクラブ。無駄を嫌う人向けの「時間シェア」はレンタカーにも
同:トイレの神様(植村花菜)
収録アルバムが発売から3カ月間で10万枚を出荷。約10分間の演奏時間と泣ける詩が話題に
殊勲賞 せんとくん 高齢者向け住宅
技能賞 ダダ漏れ中継 加齢臭抑制下着「MXP」
話題賞 岡本真夜
残念賞 バンクーバー五輪
ということで、2010年上半期のヒット番付から「空気読み」した5つのキーワードです。
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キーワード1:「もやもやを解消してくれるもの」
先の見えない、正確にはマシな未来が見えない日本の閉塞感に対して
さっぱりと希望や夢を見せてくれたり、気分を開放してくれるものが受けたようです。
そして、自分たちを肯定してくれ、元気づけてくれるもの。これが求められました。
ex.東京スカイツリー、坂本竜馬、もしドラ、AKB48、山スカート(登山ブームという意味で)、ビッグアメリカシリーズ(低カロリーものが多い中での、あえての「ビッグ」感が気持ちいい)
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キーワード2:「ライフスタイルが変わるかもしれないという期待を抱かせてくれるもの」
昔新製品が出てきたときに感じたドキドキを感じさせてくれるものが成熟した製品分野では少なくなってきています。そこに、「自分のライフスタイルや生活がこの商品によって変わるかも?」という明確にイメージできるような提案をもった商品があるとヒットしています。
ex.3D、スマートフォン、iPad、ダダ漏れ中継、ポケットドルツ、コロプラ、山スカート
上記キーワードのものは「体験による驚きや感動」「使用感」を伴うので、口コミの共有が起こり話題になりやすいという特徴をもっています。だからこそ、口コミで話題になる商品はさらに話題を呼び、それによりヒットが大きくなっていくという傾向がより顕著に。
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キーワード3:「国の政策による特需を伴うもの」
残念ながら、官主導による経済的メリットを餌にヒットを創る分野もかなりランクインしています。素直に時流に乗ることも必要ということでしょう。
ex.薄型テレビ、エコ内窓
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キーワード4:「ノスタルジーを抱かせるもの」
新しい物や技術が出てきて、わんさかマスメディアで盛り上がっていると、そこについていくことにストレスを覚える感覚ができます。実際、キーワード2の分野が盛り上がれば、一方でこのノスタルジーや安心感のある分野が求められます。
ex.東京スカイツリー(場所・東京タワーができた時代への郷愁)、坂本冬美、ハイパーヨーヨー、ミルミル、クラフト、坂本竜馬、岡本真夜
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キーワード5:「価格メリット、時間メリットなどの付加価値を提供してくれるもの」
手堅い分野ですが、現在あるものの改善でヒットが産まれる分野です。
すこしでも、費用対効果がいいもの。所有から利用へという流れの中で固定概念を崩して勝負したものが受けています。
ex.LED電球、ストライド、150円ロールケーキ、エコ内窓、10分フィットネス、250円牛丼、手荒れ予防洗剤、オルニチン、カット野菜、鎌倉シャツ、低価格均一居酒屋
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