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2013/03/06

「中身化する社会」=「自分を作品化する」覚悟が必要な時代

尊敬する編集者である菅付雅信さんの『中身化する社会』を読みました。さらっと、読める新書ですが、深いし面白い!

今僕らが直面している変化の流れについてまとめてあるので、この本を題材にいろいろと議論できる本となっています。



写真は、先週山形に行ったときにもらってきた座椅子を家のリビングに設置したところを撮ったものです。旅館で何十年も使われてきた座椅子が、旅館の廃業に伴って放出されたものです。

縁があって譲り受け、自宅に届いてからワックスで磨き、さらに愛着がわいてきます。良い材料と職人の技術で作られた良質の家具を、こうやって大事に引き継いで行くことが気持ちいいと感じていたところでした。

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中身化する社会」の第1章には、このような「コンフォート」の波の紹介から始まります。


単に「快適」を示すものではなく、衣食住すべてにおいて、「本質的だからこそ心地が良い」ことを意味するものへと変容していると言えるだろうか。(p.18)

もし人々が使い捨ての商品ばかりを求めるなら、僕らの仕事もいつか使い捨てにされることに驚いてはいけない。このサイクルを突破するひとつのやり方は、目を覚まし、品質を求めるようにし、そして、よく仕立てられて長持ちする、意味のある商品を買うことだと思う(p.20)

今は、基本に立ち戻って、人生をシンプルにするべきとき。物事のコアを探るべきときだと思う(p.98)

クオリティのある生活は、そのために仕事をする価値があり、そしてそれこそが人生を満たすものだと、みな思うようになっている(p.104)


そして、コンフォートの波はファッションのカジュアル化にも影響し、「ソーシャルメディア上でその人の考えていることがわかる時代には、もはや見た目だけの重要性は低下する」という個人メディアとの関係性に踏み込んでいきます。

「匿名的、つまり、固有名がないこと。それが服装のことであれ、個人として立とうとしないことは、“アティチュード(心構え)”の問題として、すでにクールではない」(p.188)

情報の洪水のなかで、考えることをやめて激流に身を任せるのか?それとも、その洪水に抗いながら、自ら定めた方向へ泳いでいくのか?(p.160)

情報が氾濫し、生き方が可視化された時代に、クリエイティブな人はどうすれば評価されるのか。評価される人生を送るしかない、(中略)、それはつまり『人生の作品化』です。(p.214)

ネットで生き様が見られている、情報化されている以上、生き方を作品化しないと人々は評価してくれないのです。『人生の作品化』などと言うと美しく響くかもしれませんが、大変な時代が到来したとも言えます。匿名的な裏方でいながらも影響力のある第一線のクリエイターでいるというあり方は、なかなか成立しづらいのです。(p.215)

現在進行系で私が直面している世界のことを代弁してもらっているような感覚になります。やはり、実行者として「自分を作品化」して生き残っていかなくてはならないと、強く認識させられる本です。

「自分を作品化」することは、セルフブランディングとは異なります先ほど紹介した座椅子の職人やデザイナーが世間に胸を張って言える「自分の仕事」を残しているように、自分の仕事や姿勢に「美学」がますます求められるということです。

自分が関わった仕事・作品に自分の名前がついても恥ずかしくないものを、ちゃんと向き合って残していく。それが振り返ってみると「自分を作品化する」ことにつながるのだと思います。

菅付さん、素晴らしい本をありがとうございました。


第一章 ソーシャルメディアが「見栄」を殺す
ブルックリンで体験した「コンフォート」の波
『セックス&ザ・シティ』の女優はコンフォートへ
カジュアルダウン化が進む世界
消費者のラグジュアリー疲労
もはや見た目の第一印象は重要ではない
ファッションはインスタントな言語ではなくなった
ラグジュアリーの魔法が解けた
ラグジュアリー離れは情報の動脈硬化
ネットは見栄を検証する
もはや個人の年収もネットで判断できる
検索が生き方を変える

第二章 ライフスタイルが「競争的」になる
クラフトマンシップの復活
お洒落なレディー・ガガよりもブスなアデルが売れる理由
ネットが生んだ新しい手作りの波
ピクセルの世界では味わえないリアルなものづくり
イメージ産業の衰退
先進国の人々は広告を信じていない
広告ではなく「コミュニケーション」
広告の未来は広告ではない
企業はソーシャルメディアでひとつの人格になる
イメージよりも言葉が強い時代
オーガニックは食を透明化する
健康的なイメージではなく本質の追究
カウチ・サーフィンが旅行を原点に回帰させる
ソーシャルグッドなライフスタイル誌の台頭
『第四の消費』が示す、浪費でない消費
「イメージの競争」から、「本質の競争」へ

第三章 人が、そして社会が「中身化」していく
大衆に「可視化」されるプライバシー
有名人は徹底的に可視化される
ジャスティン・ビーバーのやらせ可視化
オーヴァーシェアする人々
「あなたが誰だか知っている」
ソーシャルな人格を管理する
有無を言わせぬ「中身化」の波
人がネットで採点される
ネットの採点が就職に影響を与える
人生全体を記録するライフログ
与えられた情報だけをむさぼる動物とならないために

第四章 「中身化する社会」を生きる
検索の中で、自分の生き様を見失う
IBMが予測する「評判という資本」
人間の「計画的陳腐化」からの脱出
ソーシャル・キャピタルの広がり
貨幣から評価に価値をおく社会へ
「普通」をやめよう
等身大の自分を情報として共有する
坂口恭平の徹底した中身化の生き方
自分でもわからない領域
ネット社会を「分人」として生きる
21世紀の仕事の大きなシフト
英エコノミスト誌が指摘する「日本というぬるま湯」
人生の作品化、人生のシグネイチャー化
村上春樹が説く「どんな風に生きるか」
コミュニケーションのレベルが一段上がった社会
「豊かさ」の定義が変わる




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