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2015/04/10

カスタマーの”健全な負債感”の集積が、ブランドになる(影山知明さん著「ゆっくり、いそげ」を読んで)

西国分寺にあるクルミドコーヒー、そしてそこから産まれたクルミド出版・影山知明さんの本「ゆっくり、いそげ」を読みました。

実際にクルミドコーヒーを訪れた時の雰囲気や、影山さんにお会いしてお話した時の印象どおりの本です。

実践してきたことの背景にある哲学を伝えるためであり、そこで得られた知見を社会に還元するために書かれた本とも言えます。



ひさびさにブログを書こうかなぁと思ったのは、この本の中にある「交換を不等価にする」という考え方が、自分が感じてこのブログでも書いてきた価値>価格の関係と同じこと(ちゃんとつくって、売って、欲しい人だけ会えればいい。しかもそれなりに繁盛してる)を実施していると感じたからです。

本から引用すると
交換を「等価」にしていはしまってはダメなのだ。
「不等価」な交換だからこそ、より多くを受け取ったと感じる側(両方がそうと感じる場合もきっとある)が、その負債感を解消すべく次なる「贈る」行為への動機を抱く。
だから、お店が定価以上のいい仕事を続けていけばお客さんは増えていくし、それは提供者サイドにとっての手応えともなり、お店に前向きなムードをつくる。
そして、こうしたお客さんの側への「健全な負債感」の集積こそが、財務諸表にのることのない「看板」の価値になる。
この、健全な負債感の集積が財務諸表になることのない看板という話は、ブランドはどうやってできるのか?ということを表していると思います。

僕の実体験として、健全な負債を解消するために贈る行動に移った話として以下のエントリーを書いています。(買った後に、お礼のお手紙まで書かずにいられない商品



お金を出して商品と交換する。これで価値の交換は終わっているはずなのに、こちらが払った分が少ないと感じて、メッセージを書いて送ってしまうとは!
 と自分も書いていますが、
これが交換が不等価になり、そのおかげで、受け取った側が何かしなくちゃと思った事例だと思います。

ちなみに、こうやってお金を払って本を読んだだけで終わらずに、ブログまで書いているのもまさに健全な負債感ですね。



他にも、マッキンゼー出身でベンチャーキャピタル(ミュージックセキュリティーズ)経験者だからこそ書ける、新しい社会(人際交流)をつくるための接続性や、金融が担える可能性などについても書かれています。




■ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済
まえがき

第一章 一キロ3000円のクルミの向こうにある暮らしを守る方法
クルミの里
日本の農業を守るには?
一キロ3000円のクルミの向こうにある「新しい経済」
クルミの里づくりの努力
より複雑な価値のキャッチボール
不特定多数ではないが、特定少数でもない
身体性を伴うコミュニケーション
コラム1 特定多数とは何人か?

第二章 テイクから入るか、ギブから入るか。それが問題だ
クルミドコーヒーでポイントカードをやらない理由
事業の始まりは「テイク」と「ギブ」、どちらからか
送ることを身体で覚える“マゾ企画”
お客さんの中に眠る「受贈者的な人格」
テーブル上のクルミとクレーマーのこと
「投げ銭」システムでは広がらなかったコンサート
交換を不等価にする
日本にチップが普及しない理由
経済はどうして成長するのか
コラム2 贈与論と自由

第三章 お金だけでない大事なものを大事にする仕組み
「利子はコーヒーで払います」
ファンからの応援でCDをつくる
「期待利回りマイナス50%」の金融商品
出資に基づく関係性の可能性
金融が持つ力
「約束」の数珠つなぎ
世界中でコカ・コーラが飲めるのはなぜなのか
駅前がチェーン店ばかりになる理由
大事なものは、お金だけなのか?
「特定多数」の個人が直接にやり取りすること
クルミドコーヒーファンドをつくるとしたら
コラム3 大きなシステムと小さなファンタジー

第四章 「交換の原則」を変える
18万回の「交換」
「お店にチラシを置いてもらいたい」への答え
習慣化する「利用し合う」人間関係
一通の手紙
著者を支援する−クルミド出版
支援すること=自分を利益の犠牲にすること、ではない
採用されなかった“society”の訳語
誰かを支援した時にもらえる「お金」
お店☓農家☓援農ボランティア
自分たちの仕事を見直す契機
「受け手」が、「贈り手」を育てる
お金とは受け取るための道具
自動販売機化する社会
経済とは交換の連なり
コラム4 地域通貨が続かない理由

第五章 人を「支援」する組織づくり
外との交換と、内との交換
会社はボランティア組織?
スタッフ採用時に必ず聞く質問
組織のために人がいるわけではない
水出し珈琲研究所
「支援し合う関係性」に基づく組織へ
川上さんのビーフシチュー
ビーフシチューに溶け込んでいるもの
仕事に人をつけるか、人に仕事をつけるか
働き方の第三の選択肢
自力本願と他力本願
コラム5 支援学と自己決定

第六章 「私」が「私たち」になる
「三つの円」
「私たち」とはどこまでか
企業の社会的責任?
伸び縮みする「私たち」
経済活動は関係性を破壊する?
日曜からスッキリしない、クルミドの「朝モヤ」
聞くこと、そして違いを楽しむこと
お店を通じての「支援の話法」
不自由な共生から、自由な孤立へ
他人と共に自由に生きる
公・共・私
コラム6 東京にはパブリックがない?

第七章 「時間」は敵か、それとも味方か
「50年続くお店にしたい」
そこにある、目に見えないもの
傑作は、最初から傑作なのではない
現代は、定番商品が生まれない時代?
傑作を失うことで、ぼくらが失うもの
時間との戦い
30000回のペダル
仕事の正体は「時間」である
本とともにある時間
発刊の一年半後に開催されたイベント
愛されるものになるために必要な時間
「利益」の定義を変える
ガラガラのお店を開け続けて得た利益
ゆっくりいそげ
GDPを成長させる方法
コラム7 時間を味方にして生きるには?

あとがき


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