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2011/11/28

[書評]ジェフ・ジャービズ「パブリック」。猜疑心や駆け引きが入り乱れた時代から、正直に包み隠さずの世界へ



NHK出版の木村さんから献本していただきました。ありがとうございます。

すでに、僕らはこっち側の世界で暮らし始めているので、「パブリック」で紹介している自分を曝していく世界観には驚きはありません。しかし、ジェフ・ジェービズが書籍として、新しい社会にルールを垣間見せてくれることで、この流れが理解されるきっかけになると思います。

いくつか気になった部分を以下に引用しておきます。

■パブリックとプライベートについてのザッカーバーグの言葉
「インターネットやフェイスブック以前の世界では、誰もが無名であるがゆえに膨大なプライバシーが存在した」

「人は生産者か消費者のどちらかでしかなかった。そのふたつがはっきり分かれた社会、ある意味で自然に反する社会だった」。<パブリック>というツール、たとえばメディアは少数の手に握られていた。今ではそれがみんなの手のなかにある。「だから、問題は『完全にプライベートかどうか』じゃない。『何をシェアし、何をシェアしたくないか』だ」
たしかに、僕らは何をシェアするかによって、パブリックな顔を作っている。一方で、シェアしないことによって見せない顔も存在している。

■パブリック時代の企業のあり方
企業は、自社の価値を、所有物の値段ではなく、つながりの質で測るようになるだろう。つながりは企業秘密より大きな価値をもつようになるだろう。四半期収益よりも、つながりが企業の将来性を表すだろう(つながりが真の長期的価値を海、ライバルへの参入障壁を築くからだ)。ブランドはつながりそのものだ。


物事を公開しオープンに議論すれば、ライバルにも秘密が漏れ、良いアイデアが盗まれると恐れる企業があると聞く。自分たちの価値は製品のなかだけに存在し、隠すことに意味があると思っているなら問題だあなたの会社が顧客と協力し、彼らの欲しいものを提供する企業として知られれば、忠実な顧客が増えるだろう。もしあなたが顧客なら、コラボレーションを通じてより良い製品をつくる企業、あなたに耳を傾ける会社を選ぶのではないだろうか?
来月出版する本でも、このソーシャルメディア時代のそもそもの企業のあり方について書いています。個人以上に、企業はより透明性を求められます。もう企業が裏の顔を持つことや隠し立てをする時代に逆戻りすることは難しくなるでしょう。

■全員がパブリックになる必要はないのかもしれない
パブリックな存在になることでのみ、人はこの世界に足跡を残せる。政治思想家のハンナ・アレントは、人間はパブリックでなければ、森の中で誰にも聞こえず倒れる木と同じだ、と言う。プライベートであることで、「人生そのものよりも永遠に続く何かを手に入れる機会を奪われる・・・・・・。プライベートな人は、表に現れない。だから存在しないようなものだ」と。
自分の名前で主張していくこと、作品を出していくことで、ネガティブな面も当然あります。でも、主張したいのであれば、パブリックにならざるをえません。一方で、主張もなにも必要なく市居の人として一生を全うすることも悪いことではないと思います。

さきほどの企業のあり方と同様に、より影響力を持つものほどパブリックにオープンにならざるをえない時代になります。一方で、これから影響力を持つようになる人や企業は、オープンにしていくことで支持を得て、影響力を持つようになっていく時代です。

結果的に、「正直は最大の戦略」の世界に向かっています。猜疑心や駆け引きが入り乱れた時代から、正直に包み隠さずの世界へ。ちょっと飛躍しますが、日本の外交はそういう意味で先を行っているのかもしれません。

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2011/11/27

【近況】なんとか12月に新作出版できそうです。



やっと三冊目の書籍がほぼ終了しました。再校も戻し、後は念校を見るだけです。たぶん、表紙もこんな感じで確定です。「顧客に愛される会社のソーシャル戦略」12月中旬から下旬にかけての発売です。よろしくお願いします。

まだ、今年を振り返るのは早いですが、一年で2冊も書籍を出すことができました。ただ、自分は多作のスタイルは向かないなぁと認識しています。こだわりもそうですが、一冊にかけるパワーを考えると、同時に複数冊という器用なことはできません。

他の方がどうなのかわかりませんが、企画書から実際に書き始めると、その間に新しい発見や出会いがあり、中身が変わっていくのです。一本筋の通った核である主張は変わらないのですが。。。よく彫刻家とかがいうように、掘っているうちに形が見えてきたり、自分が本当に言いたいことがわかってくるという感覚です。そうすると、一冊にかかる時間も長くなってしまいます。

ということで、やっとBlogを書く時間も戻ってきます。僕の場合、Blogを書く時間=考える時間ですから、とても嬉しい! 2011年も残1ヶ月、忘年会と今年の仕上げを頑張ります。


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2011/11/16

Monocle編集長タイラー・ブリュレ氏講演より。「ネットがあるからこそ、実際にその場に行って人と会うこと大事」



昨日のエントリーで紹介したMonocle編集長タイラー・ブリュレ氏の講演「ポスト・ラグジュアリーの時代」の感想続きです。

いくつか個人的に刺さった部分をピックアップして紹介しておきます。

1:年間200日以上海外にいる理由

・ジャーナリストとしての自分の役割。ネットサーフィンでわかったように思っているのではなく、外に出て人と会うことで意見を形成していく。同僚なども世界へ出かけて行って、経験したことを共有していくことが大事

・実際に「その場」にいることが大事。ネットがあるからこそ、実際にその場に行って人と会うことが重要。目に見える形で、そこにいることが大切


2:日本のアピール下手・マーケティング下手な点

・海外のハイストリートに日本人建築家が設計した大使館を設置すれば、日本ブランドをアピールできる。中にいる人達は、どんな人達なんだろう?と興味を持ってもらうことができる

・311以降、日本で国際的な会議を行なっていない。ダボス会議などを招聘したらいいのに

・日本ブランドは、海外でも日本の文脈でマーケティングを行なっている。いい商品やいいサービスを持っているのだから、それを表現していく必要がある


3:メディアに関して

・monocleが創刊したときに、「物理的なものを提供する」ということに重点をおいた。物質、紙であることのフェティッシュ

・台割はAffairs/Business/Culture/Design/EditsのABCDE。読者に対してハードルの高い国際情勢から始め、徐々にデザインなどの楽しいものへ

・雑誌の価格も高く、WEBも購読しないと読めない作り+podcastで提供。リテール(リアルショップとウェブショップ)を準備し、コラボ商品を販売
※僕が感じたのは、雑誌じゃなくてMonocleというコミュニティを作っている。価格が高くても、このブランドの世界観・セレクトが好きなのでお店やコラボ商品を買って参加したくなる

・新しく始めたのがmonocle24=ラジオプログラム。ソーシャルメディアでは、多くの人が叫んでいる。小さなディナーテーブルに親しい数人と、良い料理を囲んで楽しい会話をしているようなリラックスした雰囲気をみんな欲っしている。だからこそ、ラジオというメディアを選んだ。本当のインタラクションができる贅沢な場

・国営ラジオなど、ちょっと古いけれど上品なブランディングがされている雰囲気を参考にした

メディアには「いい目利き」が必要。よい編集者がいて、ちゃんとした目を通してみないと間違ったことを信じてしまう

・マスメディア/ソーシャルメディアには、それぞれの位置づけがある。レガシーメディアの課題は、適切な編集がされていないもの、いいプロデュースがされていないものが多すぎる。ファッション業界では、いいバイヤーを探しているのと同じ。優れた編集者やジャーナリストが必要。ストーリーテーラーが必要。大きなメディアは、方向性を示す力を持っているのだから。


と、非常に考えさせられるのと、編集者出身である自分が共感できる内容でした。ネットで会議がすんでしまう時代だからこそ、現地に行くこと、人と会うことの重要性は増しています。ものすごいスピードで玉石混交な情報が溢れているから、落ち着いて温かみがあり信頼のおける情報が必要ですね。


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2011/11/15

ポスト・ラグジュアリーの時代に、スポットが当たるのは日本のスモールカンパニーの商品



昨日、アカデミーヒルズで行われたタイラー・ブリュレ氏の講演会「ポスト・ラグジュアリーの時代」へ参加してきました。(やっと書籍の完成までの一山を乗り切って、晴れ晴れした気分で参加しました。

講演の案内文に内容がまとまっているので引用します
「バブル時代」が終焉した後も2000年代初めまで、世界の高級ブランドメーカーは、日本で売上高を伸ばし続けました。しかしその後、ラグジュアリー・ビジネスは停滞しています。 タイラー・ブリュレ氏は、上記エッセイの中で、「日本は世界初のポスト・ラグジュアリー型経済、つまりゴージャスなブランドを人々が求める時代から次の経済モデルへと着実に転換した。そして、日本の消費者は“本物”を求めている」と、分析されています。 つまり、「ポスト・ラグジュアリーの時代」に突入した日本の消費者は、ブランドに惑わされることなく、自分が価値を認めた商品にはお金を出す傾向が、明らかになってきたのではないでしょうか。 そのときに、見直されたのが、日本のモノづくり、伝統の力、「日本ブランド」です。例えば、高品質な今治タオル、帆布を使ったハンドメイドバック、丹念な縫製の上質な服・・・。


講演で話に出たことは、私たちが生きている日本の消費の気分の変化でした。

<生活者側> 
・日本が最初にポストラグジュアリーの時代にやってきている
・本物志向になってきている
・多くの収入を目指すのではなく、友人家族に囲まれて、幸せな生活を志向

一方で、スモールカンパニー/スモールブランドが世界に通用する魅力的なものを作っているという視点は彼ならではの提案でした。

<スモールカンパニー>
・小さな会社がインターナショナルに戦えるものを作っている
・シンプル 細やか 効率ではないこだわり 伝統 自然素材への愛
・イギリスなどでは中小ブランドが力を持つのが難しい。しかし、日本は…

※他にもこの主題とは違うところでいろいろといいお話があったので、別エントリーにします
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 以下は、あくまで講演会を聞いた上での私の考えたことです。

私も、ずっと日本が先進国の未来を走っていると考えてきました。成熟社会になると消費意欲も衰え、ゴージャスなヒエラルキー型の消費から、地に足がついたもののほうが賢く見える時代に入ってきていると思います。

・成金趣味ではなく、質実剛健な商品を選択する
・環境にやさしく、長く使えるものを選択する
・新しいものよりも、手を加えながら何年も使ってきたもののほうがかっこいい
といった傾向です。

しかし、日本の特筆すべき環境は、そのニーズを満たすスモールカンパニーが生息していることだということに気がつかされました。
・伝統の技術を用いた質実剛健の商品
・自然の素材などを用いた商品
・創り手が細やかなこだわりを持った商品
・修理やリメイクを完璧にできる職人たち

生活者側の気分の変化と、もともとこだわって物を作っていた企業群という両輪が揃っているのが日本の特筆すべき環境だということです。だからこそ、他の国がポストラグジュアリーの時代に入ってきたときには、家族経営に近いスモールカンパニーから生まれた商品が世界に進出できるチャンスがあると思います。

「本当に欲しい人だけが、買ってくれればいい」というこだわりの商品作りでも、日本だけでは成立しなかった規模が先進国のニッチターゲットが集まれば成立できるようになるでしょう。

まさに雑誌MONOCLEが、雑誌ターゲットをニッチなジェットセッター層に置き、英語読めるだろうからこだわりある媒体を作れば全世界マーケットで成立できるという発想と同じことです。

生活者が志向する「多くの収入を目指すのではなく、友人家族に囲まれて、幸せな生活」を実現するための商品を、同じ想いで(巨大化することを是とせずに)経営されているスモールカンパニーが作って成立していけるという姿は、すごくいい循環だと思います

そういえば、以前もMONOCLEを読んでこんなエントリーを書いていました。
世界的に「家業」が再ブーム?足が地に着いたビジネスがCOOL。

 



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